再生可能エネルギーが主力電源へと躍り出たいま、「固定価格買取制度(FIT)」「FIP」という言葉を聞かずに一日は終わりません。それでも実務の現場では「違いがあいまい」「計算式が難しい」と感じる方が多いのも事実。本記事は〈制度のしくみ〉にフォーカスし、歴史、料金の成り立ち、移行の背景、国際比較までを丁寧に整理しました。読むだけで電気料金の裏側が見える5000字超の基礎講座です。
FITとFIPの誕生を歴史でつかむ
制度を理解する近道は年表を追うことです。2000年代初頭、再エネ導入のハードルは「高コスト」と「価格変動リスク」でした。この2点を解くために各国が採った策がFIT、次のステージがFIPです。
固定価格買取制度(FIT)の出発点
1990年代にドイツが採用した「電力会社が再エネ電気を一定価格で20年間買い取る」仕組みがルーツ。投資回収の確実性が評価され、世界に広がりました。
FIPへバトンタッチした理由
再エネコストが下がると過剰支払いや市場歪みが問題化。市場価格+プレミアムでインセンティブを与えるFIPが欧州で主流になり、日本も2022年度から移行を開始しました。
制度の骨格を図解なしで言葉にする
「結局どうお金が流れるのか」を文章だけでイメージできるよう、要点を3ステップにまとめます。
FITの流れ
①発電事業者が系統に電気を流す→②電力会社が法律で決まった単価で全量買い取る→③電力会社は買い取り費用を賦課金として需要家から回収する。ポイントは市場価格を気にせず売れること。
FIPの流れ
①発電事業者が卸電力市場で売電→②市場価格に上乗せする形でプレミアムを国が交付→③価格が上振れした場合はプレミアムがゼロ、逆に暴落時は下支え機能が働く。市場統合とリスク緩和の両立が狙いです。
料金計算をざっくり理解する
複雑な数式を省き、イメージで捉えます。
FIT単価の決まり方
導入コスト、資本コスト、運転費、適正利潤を積み上げ、利回り5〜7%を確保できる水準が目安。太陽光は制度開始当初40円/kWh超でしたが、2025年度公募上限は9円台まで下落しています。
FIPプレミアムの算定
基準価格(LCOEベース)と市場平均価格の差額がプレミアム。基準価格より市場が高ければ支給ゼロ。市場と連動しつつ最低限の収入を担保する仕組みです。
国際比較で見える特徴
同じ名前でも実装は千差万別。欧州・北米・アジアを俯瞰します。
欧州:競争入札+スライディングFIP
英国やドイツは入札で基準価格を決め、差額契約(CfD)で下振れ分だけ補填する方式。予算管理がしやすいのが長所です。
北米:RPS&PPA中心
米国は州ごとのRPS(再エネ義務化)と長期PPAが主流で、FITは限定的。市場メカニズムを活かし競争を促進しています。
アジア:FITから段階的移行期
日本・韓国・台湾は高めのFITで導入を加速後、オークションとFIPを導入中。投資環境と系統事情をにらみつつ調整が進みます。
メリットと課題を整理
制度は万能ではなく、光と影があります。
FITのメリット
投資回収の確実性が高く、導入初期に劇的な普及を実現。地方資本の参加も進みました。
FITの課題
コスト低下後も高単価が続き、賦課金が家計を圧迫。市場と切り離されるため、発電事業者が系統制約に無関心になりがちです。
FIPのメリット
市場統合で発電事業者が価格シグナルを受け取り、出力抑制や蓄電導入のインセンティブが働く。
FIPの課題
価格変動リスクが残り、金融機関の融資審査が厳格化。小規模事業者にとっては参入障壁が上がる可能性があります。
再エネ業界が押さえるべき今後の論点
制度は静的ではありません。議論の最前線を3つ紹介します。
① 追加性の確保
従来電源に置き換わる「追加の再エネ」であるかを基準価格設定でどう担保するかが議論中。
② 需給調整市場との連携
DRや蓄電池が市場参加しインバランスを最小化する仕組みとFIPの併用がカギになります。
③ 低所得者対策
賦課金や市場価格上昇に対するエネルギー福祉の設計が先進国でも課題化。料金回収と公平性のバランスが問われます。
まとめ
固定価格買取制度(FIT)とプレミアム制度(FIP)は、再エネ導入フェーズに応じて役割を分担する兄弟のような存在です。FITは導入初期の安全ネット、FIPは市場統合とコスト抑制を両立させる次世代ツール。違いを理解すれば、政策変更のニュースに振り回されず、自社戦略を冷静に組み立てられます。まずは基礎知識を社内で共有し、制度のアップデートを継続的にフォローしましょう。
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